小林敏也画本(えほん)原画展 宮澤賢治の世界
2015年3月21日[土]~6月1日[月](終了)
■えほんに作り込まれた宮澤賢治の世界
『画本 宮澤賢治』シリーズは、1979年に第一作『どんぐりと山猫』が出版された後、1980年代以降に毎年1冊ずつ世に送り出されたロングセラーで す。小林敏也さんがスクラッチという独特の技法や木版で描いたもので、「画本」は「えほん」と読みます。風合いのある紙やインクの色選び、印刷のしかたに も小林敏也さん自身がこだわって、装丁から製本まで関わりました。プロセスのひとつひとつを丁寧に楽しみながら作った職人魂の宿るえほん。根強い愛読者も たくさんいます。
一般のカラー印刷と違い、このシリーズには2・3色で特色刷りされているものが多くあります。白黒原画の上に1色ずつ重ねながら印刷をするので、指定し た色の分だけ原画があるわけです。たとえば『雪わたり』で四郎とかん子の兄妹が月夜の森を行く一場面は、2枚構成の原画であることが本展をご覧になるとお わかりいただけるでしょう。
「大人も楽しめるようなえほんを作りたい」という思いで、小林敏也さんは常に「本物」を追求してきました。宮澤賢治の文学に惹かれ、童話の場面ごとに、または詩の一節ごとに、その世界を「画」に繰り広げています。
目も心もぐいと惹きつけられる『雨ニモマケズ』や『注文の多い料理店』、谷川の底の光景がまさに青い幻燈のように美しい『やまなし』、迫力あるシーンや 移り変わる空の色が印象的な『よだかの星』など、本展では『画本 宮澤賢治』シリーズを中心とした10のえほんから、原画約40点を展覧します。
宮澤賢治の作品を愛する小林敏也さんならでは、原画からあふれ出るその「えほんづくり」にかける情熱をぜひ感じてください。
■小林敏也
Kobayashi Toshiya
1947年、静岡県焼津市生まれ。1970年、東京芸術大学工芸科卒業。デザイナーかつイラストレーター。イラストレーションの周辺も視野に入れたトータ ルな絵本づくりをめざし、青梅に山猫あとりゑを営む。2003年、画本宮澤賢治シリーズにより第十三回宮沢賢治賞。『注文の多い料理店』は東京書籍5年 下、『雪わたり』は教育出版5年下、とそれぞれ国語の教科書に掲載されている。
■展示作品
『どんぐりと山猫』(パロル舎/好学社)『猫の事務所』『銀河鉄道の夜』『よだかの星』『風の又三郎』『黄いろのトマト』(以上、パロル舎) 『やまなし』『注文の多い料理店』『雪わたり』『雨ニモマケズ』(以上、好学社)※各作品3~5点、計約40点の原画を展覧します。